悲しいお知らせ

むせ返るほどの濃い青に、くっきりとその存在を表す真っ白な入道雲。ジリジリと照りつける太陽は痛いほどに眩しくて、静まる気配のない蝉の鳴き声が夏の暑さを増長させる。少しガタついた自転車を押す腕は小麦色に焼けていて、半袖のカッターシャツがよく似合う。短いスカートから伸びる足は何処までも続く長い坂をゆっくりと、けれど確実に一歩一歩前へと進んでいく。時折そよぐ生温い風は、二つに結んだ髪の先を揺らしては後ろへと流れていく。

「・・・暑いなぁ、早くよっちゃんち行ってアイス買ってもらわないと」

額に浮かぶ汗を拭いながら呟いて、また自転車を押して歩いていく。道はまだまだ先が長い。





俺たちのののたんはもう何処にもいない。其々の心の中にしか、もういない。いつまでも夢見てた俺がバカだったけれど、それでもやっぱり少し淋しかった。

卒業してからずっと見ていなかったわけではないし、結婚、出産なんかは結構大きく取り上げられていたからそんな事はもちろん知ってる。ブログだってたまに見てたし、ちゃんと今どんな感じでいるかなんて、わかってたんだ。時なんてのは誰にでも平等で、俺が年をとるという事は、彼女もそれと同じだけ年を重ねるという事なのだ。そんな事当たり前で、当たり前過ぎて、だから気付かないんだ。僕の中の彼女は今日の今日まであのクソ暑い八月の青空がものすごく似合う女子高生のままだったんだ。だけど今日、目の当たりにした彼女は一人の女性で、妻であり、母だった。女の子は変わっていくね、僕のキモチなどほんの露も知らずに。自分が勝手にキモい妄想膨らましてただけなんだけどね。そんなこんなですげい複雑な感情を抱きながら仕事してました。一応仕事ですからそこんとこはちゃんと働いてきました。お疲れ様でした、パステルのプリン美味しかったです。